倫理学を大学生がわかりやすく解説【1】 トロッコ問題から見る功利主義

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皆さんは、トロッコ問題、という言葉を聞いたことああるだろうか。

結構有名な思考実験だから、割と知っている人は多いと思う。

 

あなたは線路がY字に分岐する場所に立っている。
そこへ、ブレーキの壊れたトロッコが猛スピードで走って来た。
前方の線路では、5人の作業員が作業中だ。
このままでは、トロッコは5人を確実に轢き殺してしまう。
あなたが線路の分岐器を切り替えれば、この5人は確実に助かる。
しかし、分岐先のもう一本の線路の先にも、1人の作業員がいる。
あなたがこの線路へトロッコを引き込むと、5人は助かる代わりに1人は確実に死ぬ。避難させる余裕はもう無い。
さて、道徳的に正しい選択は?

 

という問題だ。一度想像して、答えを出してみて欲しい。

 

これにもいろいろな派生バージョンがあって、じゃあ五人の中の一人があなたの家族だったら?一人の作業員、実は凶悪な犯罪者だったら?と状況を変えた質問が出てくる。

 

この問題、何が難しいかといえば、「道徳的に」何が正しいか、というところだろう。

倫理的にこれが絶対に正しい!なんて言うことは、誰にもできない。人によって考えが異なるだろう。

 

じゃあこの、異なる考え方、というのを一つづつ見ていくとしよう。その考え方の人は、トロッコ問題についてどのような答えを出すのだろうか。第一回目は、「功利主義」だ。

 

この功利主義ベンサムという人が体系化し、19世紀以降の経済学の基本的な考え方のひとつになっている。功利主義の考え方は、「最大多数の最大幸福」。つまり、社会全体として最も幸福度が得られる行為が正しい、とする考え方だ。

 

具体例を出して考えてみよう。小麦農家の人と、漁師の人がいる。彼らは継続的にパンと魚を得られるが、そればっかり食べていては飽きてしまう。そこで、作ったパンと、捕った魚を交換することにした。そうすれば、両方とも食事の種類が増えてハッピーになる。つまりこの物々交換は、社会全体の幸福度を高めている。功利主義的に正しいことだ。

 

この具体例で、功利主義が経済の基礎となっていることもわかるだろう。私たちは、生活に必要なものを自分ですべて揃えられない。だから我々はその役割を分担し、お金という媒体を使って物々交換をしているわけだ。そうして、社会全体の幸福度は高まる。

 

話を倫理に戻そう。ではこの功利主義の観点から見て、トロッコ問題はどうするのが正しいのだろうか。少し考えてみて欲しい。社会全体の幸福度が最大になる状況を。

 

 

 

答えはこうだ。分岐器を切り替え、一人を殺す。

 

そうすれば、五人が助かり、一人が死ぬ。社会全体で考えたら、マイナス5よりマイナス1をとった方が、全体としての損失が少ない。これは社会全体の幸福度を最大にしているから、正義だ。「道徳的に」正しい行為だ。

 

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あくまで忘れないでいただきたいのが、これはあくまで一つの考え方だということです。

まだまだ倫理学的な考え方はあるので、それはのちのブログでお話しします。よかったら読んでいただきたいし、コメントであなたの意見もお聞かせいただけると嬉しいです。

 

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