【夜光物語】第漆話 「不思議な出会い」

翌朝、二人は宿から出て歩き出した。いくら夏とはいえ、ここは山奥。朝靄がかかる中、少し涼しいくらいの気温だった。

 

「リハクさん、どこに向かうの?」

タマモがこちらを見上げて尋ねてきた。

 

「ここから南に数時間歩くと、少し大きな宿場町があります。そこまで行きましょう。ゴーストバスター協会の支部もありますしね。」

 

「わかった!」

 

そういうと、タマモはパタパタと駆けていき、私の少し前を歩き出した。ふんふんと鼻歌を歌い、尻尾をふぁさふぁさと揺らしている。昨晩でだいぶ体力を回復できたらしい。

 

彼女が着ているのは、赤い女の子用の着物だ。昨晩泊った宿屋のおばあちゃんが、自分の孫が使っていたおさがりだといってくれたのだ。タマモは貰った着物を抱きしめ、おばあちゃんありがとう!と目を輝かせていた。長い間他の妖怪から不遇な扱いを受けて来たのに、ずいぶんと礼儀正しいし、素直でいい子だ。おそらく彼女の話に出てきた、使用人のおばあがいい人だったのだろう。

 

 

 

タマモの様子を見つつ何度か休憩をはさみながら、太陽がてっぺんに上るころには無事に目的地の街にたどり着くことができた。大きな街道上にある宿場町なだけあって、たくさんの妖怪たちが往来している。道沿いには多くの店や旅館が立ち並んでおり、客引きの声、旅人たちの足音、馬の鳴き声なんかでガヤガヤととても賑やかだ。

 

「あいすいません、ちょっと通ります。」

 

そう言って後ろから声を掛けてきたのは、荷物を背負った一つ目の馬を引く、小豆とぎの集団だった。恐らく西から物を運んできた馬借達だろう。妖江戸の町に向かっているのか、私たちが道を開けると周りには目を向けずにそのまま街を出て、東に向かっていった。

 

「うわあ…」

 

はぐれてはいけないので、私と手をつないで歩いているタマモは、口をポカンと開けて、あちこちをキョロキョロと見まわしている。

 

「すごいすごい!村の何倍も怪異がいる!」

そう言って興奮した様子を見せていたタマモだったが、ふと歩みが遅くなった。

瞳を向ける先にあるのは…

 

「食べてみたいですか?五平餅。」

 

「いいの!?」

 

「ええ。朝から結構歩きましたから、お腹もすいているでしょう。」

 

私がそういうと、タマモは屋台まで私の手を引いて行った。入道のおやじが焼いている五平餅は、醤油がちょうどいい具合に焦げており、香ばしい匂いが漂っている。確かに美味しそうだ。

 

まあ、美味しそうといっても、私は口で味わうことはできないのだが

 

五平餅を購入し、ゴーストバスター協会に向かっていると、宿屋の中からサルの獣人が出て来た。黄色い着流しに、猿屋というロゴの入った紺の前掛けをしている彼は、手をもみながら私たちの右手に付いて歩き、話しかけてきた。

 

「そこの一つ目の旦那!今夜はうちへ泊っておいきよ!今なら安くしとくよ!」

 

するとそこに、向かいの宿屋から犬の獣人が出てきた。こちらは赤い着流しに、犬屋と入った黒い前掛けだ。

 

「いやいやいや、うちの方が安いよ!しかも猿の店より清潔だ!こいつの店ときたら、ノミばっかりでおちおち眠れやしねえ。」

 

「なにおう⁉お前のとこの飯なんて、肉ばっかりじゃねえか!もう少し彩とか考えられねえのかよ!?」

 

「ああん!?キイキイわめくなこのくそ猿が!」

 

「何だとこの犬畜生が!」

 

...私たちを挟んで喧嘩が始まってしまった。

タマモはすっかり怯えてしまい、私の腰のあたりにしがみついている。はあ。あまり明かしたくはなかったのだが、仕方あるまい。

 

「私はゴーストバスターです。協会に向かっているので、その道を通してください。」

 

そう言ったとたん、二人はびくっとして口論をやめ、作り笑いをこちらに向けた。

 

「ご、ゴーストバスター様でいらっしゃいましたか。大変失礼いたしました。」

 

「ど、どうぞお通りくださいませ。」

 

そういうと彼らは、スッとお店の中に帰っていった。

周囲の喧騒はいつの間にか静まり、辺りにいた妖怪たちはこちらに視線を向ける。

 

タマモはその変化を不思議そうに見つめ、私に問いかけてきた。

「どうしてみんな、こっち見てるの?」

 

「どうやらこの町のゴーストバスター協会は、あまり民衆と良い関係を築けていないらしいですね...。たまにそういう町もあります。」

 

私たちは少し足早に、その場を離れ協会の建物に向かった。

 

第七話「不思議な出会い」

 

 

 

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【夜月物語】第陸話 「優しい神様」

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その日の夜、私は興奮してなかなか寝付くことができなかった。

 

こんなに生活が一変するなんてこと、あるんだろうか。あのじめじめした倉庫の、硬い土の上で寝ていたのに、今は柔らかい布団の中にいる。

 

今日初めて、冷たい水じゃなくて暖かいお湯で体を洗うことができた。私の毛って、こんなにふわふわだったんだ、と、体を丸めて尻尾を抱きしめた。

 

ご飯だっていつもは冷たくて、少なかった。「ゴースト」になってからは、夜中に盗んだ野菜と、川で捕った魚を生で食べてた。それなのにさっき食べた夕飯は、いっぱいのご飯と、あったかいお味噌汁、それにあんなに大きなお魚まで!おいしかったなあ。誰かと一緒に、お腹いっぱいまで食べられる食事なんて、夢だと思ってた。まるで手を伸ばしても届くはずのなかった空の星々が、急にいっぱい落っこちてきて、私の中に入ってくるみたい。星が入るたびに、私の胸の中はあったかくなって、私の周りはきらきらと輝きだして…ちょっとまだ目が慣れてないからチカチカする。なんだか…泣いちゃいそう。

 

私は、部屋の奥の方で椅子に座り、月明かりに照らされているリハクさんを見る。

 

おじさんは、神様なんだろうか?あの倉庫の中で死んだように暮らしていた私に、普通の妖怪として生きる道をくれた。私の呪いを、そんなものはないと言い切ってくれた。私はおじさんに出会って初めて、この世界に「生まれる」ことができたんだ。

 

なんて考えてたら、リハクさんはこっちを振り返った。

 

「どうかしましたか?」

 

「ううん、なんでもない。」

 

「そうですか、明日にはこの宿を出て歩きますので、今日はもう寝てください。」

 

「うん、わかった。…ねえ、リハクさん。」

 

「何ですか?」

 

「私を救ってくれて、ありがとう。」

 

 

 

タマモの目から流れた涙は、頬を伝い枕に落ちていた。その様子は…私に昔のことを思い出させた。

 

私は立ち上がり、タマモのそばに歩み寄った。そして手で、彼女の頭を優しく撫でた。

 

「私は、当然のことをしただけです。それに、もちろんタダというわけではありませんよ?私の仕事、手伝っていただきますからね?」

 

少し冗談めかしてそういうと、タマモはふふふと笑った。

 

「さて、もう寝てください。私は少し作業がありますので、もう少ししてから寝るとします。」

 

「うん、おやすみなさい。」

 

「はい、おやすみなさい。」

 

こうやっておやすみを言うのも初めて、とタマモはつぶやき、目を閉じた。

 

頬に残った涙の跡が、月明かりに照らされていた。

 

 

 

 

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【夜光物語】 第伍話「地獄からの再出発」

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とりあえず私は、その狐の少女にきれいな水と食料を差し出した。はじめは警戒する目つきをこちらに向けていたので、先に一口食べて安全であることを示した。ガツガツと飲み食いする様子を見ると、どうやらまともな食事は久しぶりらしい。

「おふぃふぁんふぁ、ふぁふぃがふぉふふぇふぃふぁふぉ...」
...食べながら話すので、何を言っているのかさっぱりわからない。
「食べ終わってから話してください。待ってますから。」
私は失笑交じりに言った。まあ、笑うといっても以下略


一分後、少し落ち着いた様子のその少女は、こちらを見上げて不思議そうにこう言った。
「おじさんは何の人?どうして私を避けないの?ゴースト怖くないの?」

二回目の突入時、私には「視えて」いたから、どうということはなかった。しかし、実際にこの少女が見えていたわけではない。私が視ていたのは、この場に流れる妖気なのである。

ゴースト妖怪問わず、怪異たちの体には妖気というエネルギーが流れている。これは彼らが生きている限り、常にその体内で生み出され、循環し続けている。逆に言うと、この妖気が何らかの理由で体から失われてしまった時、それはその怪異の死滅を意味する。またその妖気を、怪異たちは自身の能力を使う際に消費する。


そして私はその妖気を「視る」ことができる。先ほど飛んできた石礫は、小石ほどの大きさの妖気が中心部にあるだけだったし、水流は手ですくったほどの液状の妖気だった。そこで私は、それらが幻影を見せられているだけだと気づくことができたのだ。(一回目の失敗は、慌ててよく「視る」ことができなかったせいである。)

黒い塊の中に、一般的な妖怪の妖気が視えていたため、私はこれがゴーストではないと分かった。真相はそういうことなのだが、

「私の目には、なんでも見えるんだよ。」

その少女には、端折って伝えることにした。面倒だから。

「ふーん」

分かったような分からないような声で、少女は相槌を打った。

「さて、今度はあなたの話を聞かせていただきたいのですが。」
私はそう切り出した。


そこからの話は、とても気分の悪いものだった。

彼女は、あの狸山家に生まれたらしい。狸の獣人と長きにわたり対立している、狐の獣人の姿で。

聞けば昔、狸の里の男と、狐の里の女が、駆け落ちをしたらしい。その男は狸山家の唯一の跡継ぎだったため、大規模な捜索が行われた結果、彼らは数ヶ月で両家に引き戻された。

狸山家にとっての問題は、男が里に連れ戻されて程なく、自殺をしたことだ。当然、跡継ぎを失った狸山家は困る。狐の里の領主も、問題を抱えていた。その女が、既に子供を身ごもっていたのだ。生まれた子供は...狸の獣人だった。

両盟主の間で秘密の協議がなされた結果、その子供は狸山家の子供として預かられることとなった。自らの子供と引き裂かれたその狐の女は、その後精神を病んだ。彼女は死に際にこう言ったらしい。私は呪いを遺して死ぬ、両家に祟りあれ、と。その後狐の里では不審死が相次ぎ、領主の家は滅びてしまった。


彼女はいわゆる、先祖返り、というやつだ。狸山家に残された狐の血が、たまたま濃く出たのだろう。狸山家の主人は、秘密の露見と同時に、祟りを恐れた。だから彼女を隔離した。それでも彼女を殺さなかったのは、呪われることを恐れたからだろう。しかし程なくして、こうしたうわさが流れてきたわけだ、狸山の離れに、ゴーストが出るらしい、と。ゴーストバスターを呼ばなければならないが、祟りかもしれない。そうだとしたら、世間に秘密が露呈する危険性が高まる...というのが、あの領主が考えていたことだろう。触らぬ神に祟りなし、とは言うが、いやいや、ゴーストは対処しないと被害が大きくなるぞ...。それが一人の狐の女の子がいる場所なら、なおの事どうにかせねばなるまい。まあ、彼は少女のことなど頭の片隅にもなく、自分の保身しか考えていないだろうが。はあ。

自分のことについて語る少女の口調は、淡々としていた。いや、冷静をになるように努めていたが、妖気は乱れている。やはり辛いのだろう、自分が誰からも嫌われていたなんて話をするのは。


ふむ...


少し考え、私は話し終えてうつむいてしまった少女に言った。

「私はゴーストバスターとして依頼を受けました。なので私は、この場所からあなたを排除しなければならない。」

「なっ...!?」

少女はそれを聞くと驚いた様子でこちらを見上げると、後ろに飛んで構える。

が、遅い。

少女が構えた時、私は既に少女のすぐ前に立ち、そして、

 

彼女の頭に手を置いた。


撫でた。しばらくこの小屋にずっと籠っていたからか、その黄金色の毛はゴワゴワとしていたが、その下にはぬくもりが感じられた。この子は、ずっと必死に生きてきたのだ。

「あなた、私と共に旅に出ませんか?」

「おじさんと?」

「ええ、そうすればここにゴーストはいなくなるでしょう?依頼は解決ですよ♪」

少女は少し黙って、考えるそぶりを見せた。

「いいの?私は...呪いの子だよ?もしかしたら祟りがおじさんに...」


「そんなものはありません。あなたはあなたです。それにもし、祟りが私にあるとしても、私なら対処できますよ。ゴーストバスターですから。」

私は微笑んで答える。()

「...」

 

数分後、私は少女と共にその小屋を出た。夕日で空は真っ赤に染まり、八咫烏が山の方に飛んでいくのが見えた。
そこで私は、ふと疑問を投げかけた。

「あなた、名前はなんて言うのですか?」

「うーん...無いの。生まれた時から、私はただの呪いだったから。」

「無いのでは困りましたねえ、これから呼ぶ機会も増えるでしょうし。」

「...私、おじさんに名前をつけてほしい。私を普通の女の子だって言ってくれた、私に生きる意味をくれた人。」

「なるほど...。では、タマモ、というのはいかがでしょうか。物語に登場する、狐の御姫様の名前です。」

「タマモ...うん!ありがとうおじさん!」

少女は嬉しそうに笑った。にっこりとしたときに口から覗く八重歯がかわいらしい。尻尾がふぁさふぁさと左右に揺れ動く。

「おじさんの名前はなんていうの?」

「私の名前は...」

私は自分の名前を付けて貰ったときのことを思い出しながら

「リハク。私はリハクです。」


黄昏時の燃えるように赤く揺らめく世界の中、二つの影は消えていった。


第五話「地獄からの再出発」

 

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【夜光物語】第肆話「やさしい神様」

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生まれた時からずっと、独りぼっちだった。

物心ついた時から、親に触れられた記憶はない。

みんな私に近寄りたくなかったみたい。私に蔑みの目を向けてくるだけ。私は何もしてないのに。

私は、呪われた子、なんだって。

狸の家に生まれてはいけないんだって。

だから、私は世間から隠された。

ずっとこの小屋で暮らしてきた。外に出ることはできなかった。

一人だけ、私のお世話をしてくれる使用人のおばあがいた。おばあが家からご飯を運んでくれた。おばあだけが、私と遊んでくれた。

おばあは言ってくれた。私が悪いんじゃないんだって。狐と交わった、ご先祖様が悪いんだって。

おばあだけが、私にやさしくしてくれた。私はおばあが大好きだった。

でも、おばあは急に来てくれなくなった。

別の男が、ご飯を持ってくるようになった。

その人の目は、怖かった。

ご飯を持って来るたび、私のことをじろじろ見るの。頭の先から、しっぽの先まで。

でも、一言も話さない。ご飯を置いて、すぐ帰っちゃう。

ある時、その男がやってきた。

ご飯を持ってきたんじゃなかった。鈍く光る、包丁を持ってきた。

「大人しくしろ。」とそいつは言った。怖かった。物を見るような目だったから。

え、なに、何する気...と混乱している私にその男は、
「いいから黙れよ。誰もお前のことなんか気にしてねぇんだから、何されても文句は言えねぇんだよ。」と言った。

怖かった、けど、同時に悲しくなった。やっぱり私は、普通じゃないんだって。誰にも見てもらえないんだって。誰にも守ってもらえないんだって。

なら...もういいよ。もう私は、私じゃなくなりたい...誰も...近づかないで!!!

そいつは逃げた。私がゴーストになったから。そして私が、強くなったから。強く...見られるようになったから。

誰もこの小屋に近寄らなくなった。家からのご飯も届けられなくなった。

でも、私はもう、一人でいい。他人なんて必要ない。あの蔑むような目も、嫌らしい目も、もう見たくない。私は独りで生きてくの。
私は...
......
...

誰か私を、認めてよ...


私が肩を触ると、彼女は驚いた表情で私の手を振り払い、後ろに下がった。
「おじさん、私が怖くないの?」
「いいえ?怖くありません。」
「私、ゴーストだよ?」
「いえ、私にはかわいい狐の女の子が見えてます。」
そういうと彼女は、目を見開いた。彼女が着ている服はボロボロで、元は金色であろう毛皮も汚れて、くしゃくしゃになっていた。
「おじさんは、何が目的なの。私を...殺しに来たの。」

そう言われて私は、にっこり笑ってこう答えた。
「一人の狐の女の子に、会いに来ただけですよ。」
まあ、笑うといっても目しかな(以下略)

第四話「やさしい神様」

 

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今の時期 大学生の有意義な過ごし方(多分)

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お題「#おうち時間

 

こんなタグがあったので、今夜は私の生活についてお話ししたいと思います。

 

コロナの影響を受け、東京都に住んでいる私は一日のほとんどの時間を家で過ごしております。こんな生活がもう少しで一か月を超えるでしょうか。はじめはゲームをして時間を潰していましたが、そろそろ飽きてきました。

 

そこで今回は、私が色々と挑戦してみたことを紹介したいと思います。

何か参考にして頂ければ幸いです。

 

①ゲームについて

私はswitchを持っています。最近やっているゲームは、「あつまれ どうぶつの森」「2K20」「大乱闘スマッシュブラザーズ」その他もろもろ。

 

どうぶつの森、人気ですよね。外に出れない今、家の中でほのぼの無人島ライフを送れるこのゲームの人気が高まるのもわかります。

 

私はスマブラを購入してからストーリーモードをクリアしていなかったので、これを機にとプロコンを購入。やはり普通のコントローラーと違って、ボタンの動きは滑らかですし、振動もブルブルブルッと大きいです。これは...楽しい!

 

他にもアプリゲームを何個か遊んでいたら、一日が終わる、という毎日。

ですが数日後、私は思いました。

 

これ、、、何も生み出さないな、って。

別にゲームが強くなったからといって、無人島が開拓されたからといって、現実世界の私には何の影響もない。

大学生の時期というのは、人生で最も恵まれていると思います。若さもあるし時間もある。なのにこの期間を有効活用しないのはもったいないのではないか、と。

なので私は、ゲームの時間を減らすことにしました。(もちろん、楽しいのでゼロにはしません。功利主義的にはセーフ。)

 

②そうだ、読書をしよう。

そう思い立ち、近所の本屋さんへ。

特に買いたい本は決めませんでした。ぶらぶらと歩きまわって、運命を感じた本を購入しようと思ったからです。

 

小説のコーナーを順番に眺めていくと、村上春樹の「騎士団長殺し」が目に留まりました。

高校生の頃、本屋で大々的に取り上げられていましたが、時間がないからと読まなかった本。村上春樹は作家として世界的に有名ですし、読んでおいて損はないでしょう。購入。

 

そのまま漫画のコーナーへ。漫画って面白いですよね。好きな作品は、「メダカボックス」と「保健室の死神」です。(微妙にメジャーじゃないところだなとは言わないでください。)タイトルを眺めていくと、「倫理の教室」という本が目に留まりました。

 

私、昨年の夏休みに「正義の教室」という本を読んで以来、倫理学って面白いな、と考えていました。なるほど、高校の倫理の先生が、生徒たちの悩みを解決しようとする話ですか。購入。

 

家に帰ってそれらの本を読んだのですが、一つ驚いたことがありました。

 

私の活字に対する読書力が、落ちていたのです。

漫画はサーッと読めるのですが、活字を読むときの集中力が30分ほどで切れてしまいます。中学生のころ、たくさん本を読んでいたころの自分は、何時間でも本を読み続けることができたのに。数年間活字の本から離れていたことで、文章を読んでもその情景を頭に思い浮かべるためにすごく力を使います。

やはり読書の習慣は、継続しなければならないな、と実感しました。

 

③小説を書いてみたい。

夜、静かになった世界の中、一人で部屋にいると、何か創作的なことをしたい、と思うようになってきました。(明らかに「騎士団長殺し」の影響です。)

そこで一度、部屋を暗くし、外の街明かりや月を眺めて考えること数分。(私の部屋は、マンションの高い位置にあります。)

ファンタジーの小説を書こう、と思い立ちました。もともと子供のころからそういった類の話が好きで、よく妄想していました。今は時間もあるし、パソコンもある。インターネットを使えば、誰でも自分の作品を発表できる時代なのだ。挑戦してみる価値はある。そう思って始めたのが、一つ目の妖怪、リハクの物語です。コーヒーを飲みながら、夜中にカタカタパソコンで書いています。よろしければ読んでみてください。

 

④料理をもっと楽しもう。

私は一人暮らしを始めてから、一日二食は自炊しています。普段から料理を作るのですが、最近は時間が余っているので、それをもっとこだわろうと考えました。具体的な料理の作り方なんかは、後日ブログに書こうと思います。

 

⑤部屋を自分好みにカスタマイズする。

私は絵が好きで、コロナがはやる前には美術館なんかによく行っていました。そこで思いついたのが、自分の部屋の壁に好みの絵をプリントアウトしたものを貼っていくということです。

インターネット上で見つけた幻想的な絵をダウンロードし、コンビニで大きくプリントアウト。それをセロハンテープで壁に貼っていきます。

将来的には、絵画を飾れるようになりたいですが、賃貸マンションの一室を借りている学生の私にはこれで十分です。自分好みの絵に囲まれながら、時間に制約を受けることなく、ゲームや読書、創作活動に打ち込める今の生活に、私はとても満足しています。

 

 

いかがだったでしょうか。もちろんこのブログは、その創作活動や新たなチャレンジを始める一環として行っているものです。まだまだブログは初心者ですが、少しでも面白い記事を書けるようになっていきたいと思っています。よかったらコメントなんか残していってください!

 

 騎士団長殺し、よかったら読んでみてください!

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倫理学を大学生がわかりやすく解説【1】 トロッコ問題から見る功利主義

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皆さんは、トロッコ問題、という言葉を聞いたことああるだろうか。

結構有名な思考実験だから、割と知っている人は多いと思う。

 

あなたは線路がY字に分岐する場所に立っている。
そこへ、ブレーキの壊れたトロッコが猛スピードで走って来た。
前方の線路では、5人の作業員が作業中だ。
このままでは、トロッコは5人を確実に轢き殺してしまう。
あなたが線路の分岐器を切り替えれば、この5人は確実に助かる。
しかし、分岐先のもう一本の線路の先にも、1人の作業員がいる。
あなたがこの線路へトロッコを引き込むと、5人は助かる代わりに1人は確実に死ぬ。避難させる余裕はもう無い。
さて、道徳的に正しい選択は?

 

という問題だ。一度想像して、答えを出してみて欲しい。

 

これにもいろいろな派生バージョンがあって、じゃあ五人の中の一人があなたの家族だったら?一人の作業員、実は凶悪な犯罪者だったら?と状況を変えた質問が出てくる。

 

この問題、何が難しいかといえば、「道徳的に」何が正しいか、というところだろう。

倫理的にこれが絶対に正しい!なんて言うことは、誰にもできない。人によって考えが異なるだろう。

 

じゃあこの、異なる考え方、というのを一つづつ見ていくとしよう。その考え方の人は、トロッコ問題についてどのような答えを出すのだろうか。第一回目は、「功利主義」だ。

 

この功利主義ベンサムという人が体系化し、19世紀以降の経済学の基本的な考え方のひとつになっている。功利主義の考え方は、「最大多数の最大幸福」。つまり、社会全体として最も幸福度が得られる行為が正しい、とする考え方だ。

 

具体例を出して考えてみよう。小麦農家の人と、漁師の人がいる。彼らは継続的にパンと魚を得られるが、そればっかり食べていては飽きてしまう。そこで、作ったパンと、捕った魚を交換することにした。そうすれば、両方とも食事の種類が増えてハッピーになる。つまりこの物々交換は、社会全体の幸福度を高めている。功利主義的に正しいことだ。

 

この具体例で、功利主義が経済の基礎となっていることもわかるだろう。私たちは、生活に必要なものを自分ですべて揃えられない。だから我々はその役割を分担し、お金という媒体を使って物々交換をしているわけだ。そうして、社会全体の幸福度は高まる。

 

話を倫理に戻そう。ではこの功利主義の観点から見て、トロッコ問題はどうするのが正しいのだろうか。少し考えてみて欲しい。社会全体の幸福度が最大になる状況を。

 

 

 

答えはこうだ。分岐器を切り替え、一人を殺す。

 

そうすれば、五人が助かり、一人が死ぬ。社会全体で考えたら、マイナス5よりマイナス1をとった方が、全体としての損失が少ない。これは社会全体の幸福度を最大にしているから、正義だ。「道徳的に」正しい行為だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あくまで忘れないでいただきたいのが、これはあくまで一つの考え方だということです。

まだまだ倫理学的な考え方はあるので、それはのちのブログでお話しします。よかったら読んでいただきたいし、コメントであなたの意見もお聞かせいただけると嬉しいです。

 

私がこの話を学んだ本はこちらです!読み物としてもとても面白いのでおすすめです。

 

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ファンタジー小説みたいなのも書いてます。よろしければ是非、ご覧ください

 

 

 

【題名未定】物語第壱話「夜明け」 - 水月リハクのブログ

 

 

 

【夜光物語】第参話「独りの女の子」

 

suigetsurihaku.hatenablog.com

 

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「さて、ここですね。」
私はその小屋の前に着くと、スーツケースを一度地面に置き、ネクタイをきっちりと結びなおした。
狸人の主人が語ったところによると、ここは確かに狸山家が所有している小屋らしい。しかしここ数ヶ月の間は、誰も寄り付いていない。ゴーストが出たからだ、という。


この世界に存在する怪異は、二種類に分かれている。一つ目は知性を持ち、社会を形成している存在、「妖怪」。そしてもう一つは、知性を持たず、妖怪たちを襲うこともある、「ゴースト」だ。ゴーストが出るとたいていの場合、妖怪たちは自らの力で太刀打ちすることは難しい。そこでゴースト退治を生業とする者に依頼をすることになる。それがゴーストバスター、ちなみに国家資格である。

 

「しかしあの方、この小屋のことを尋ねた時、嫌そうな顔をしていましたね、どうしてでしょうか…あれだけ栄えている家柄ならば、一般の民衆には高い依頼料とは言え、簡単に払えるはずですが。」
などと独り言をつぶやいた後、私は思わずにやけてしまった。
「いいですねぇ…何かが隠されている気がします。」

まあ、にやけるといっても目しか無いのだが。

 

私はその小屋の引き戸を開け、中に入った。主人の言うとおり鍵はかかっていなかった。
倉庫として使われていたのだろうか、高いところに小さな窓一つあるだけで、中は薄暗かった。しかしそれほど、埃臭くはなかった。
「ふーむ、なるほどなるほ…!?」
目を凝らしてよく見ようとしたその時、突如として前方に黒い塊が表れた。次の瞬間そこから、たくさんの石礫が飛ばされてきた。
「くっっ…!!」
あまりに突然の出来事だったため、反応速度が遅れた。腹部に鈍痛を感じる。
その黒い塊は次に、スライムのような液状に変化し、大量の濁った色の水を飛ばした。
まずいと思った私は後ろに飛びのき、小屋の外に出て扉を閉めた。

 

「ふう。」
小屋から出て、私は一息ついた。

 


目を閉じて考えること五分、私はもう一度スーツケースを下ろし、ネクタイを締めなおし、白衣を一度脱いでバサバサと埃を払い、再び着た。
「さて、行きましょうか。」


扉を開け、中の様子に目を凝らす。そして一歩踏み入れたその時、再びあの黒い塊は現れた。

「先ほどは突然のことに、慌ててしまいました。」

私は飛んでくる石礫を、最小限の動きでよけつつ、前に進む。

「ちゃんと見れば、分かったはずなのです。」

私は濁った水をスーツケースで払いのけ、さらに前に進み黒い塊に手を伸ばした。

 

そして

 

 

「大丈夫ですか?」
と、私は狐の半獣人の女の子の肩に手を置いた。


第三話「独りの女の子」

 

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